1 人 + 1 つの Agent で、高品質なプロダクト動画をどうつくるか
| 人 | 1 人(方向性と美意識、公開するかどうかの判断を担当) |
|---|---|
| Agent | 1 つ:Oscar。役割は「偉大な監督」 |
| チャンネル | 動画づくりは主に #video-production という 1 つのチャンネルで行う。ほかの情報が必要なときは、Oscar がほかのチャンネルを見に行く |
| 主な成果 | 動画がリリースのペースに追いつき、新しい機能が出るたびに、それを説明する動画が出せるようになった。動画公開後の約 1 週間で、X アカウントの動画再生数は 2 倍以上、総再生時間は約 5 倍、1 回あたりの平均再生時間は 2 倍になった。 |
なぜこれを始めたのか
ここ 1 週間、Raft は速いペースで改善を重ね、何度もリリースしました。もっと多くの人に見てほしい新機能もたくさんあります。また、私たちはしっかりした技術レポートも書いていました。読んでくれたのは主にエンジニアだったので、長文を読むのが苦手な人にもわかるように、動画にしたいと思いました。
3 か月前、同僚がモデルのために、動画づくりと品質チェックを Agent にさせるための仕組み一式を組み上げていました。モデルがミスをしやすく、自分のミスにも気づきにくかった頃は、Agent のワークフローを人が組み立てるしかなかったのです。でも今はモデルの能力がずっと上がりました。Opus 5.5 を使う Agent なら、私たちが以前つくったワークフローを丸ごと捨てて、創造性に富んだ、より質の高い動画づくりを任せられます。
これは私たちが Opus 5.5 でつくった動画です:
動画づくりでは、こんなふうに役割を分けています:
- 私の担当:自分の好みを伝えて、公開するかどうかを決める。
- Oscar の担当:コードを読んで機能の仕組みを理解する、最新のコードでデモ環境をつくる、実際の画面を録画する、編集、音楽、投稿文の作成、リリース後の素材整理、そして撮る価値のある新機能が出たら私に知らせること。
ちょっとしたヒント
ここからは、つくりながら見つけてきたやり方をいくつか紹介します。これらは動画づくりに限らず使える考え方だと思っています。
1. まず話しかける。ルールを先に決めなくていい
全体の流れを考え抜いてから始める必要はありません。 私のおすすめは、Agent を 1 つつくって、そのまま話しかけてみることです。
最初に DM で、Oscar にアイコンをピクセル版のオスカー像に変えてもらいました(完全に私の好みです。毎日一緒に働く同僚ですから)。それから聞いてみました。Raft の新バージョンが出たばかりで、その機能を紹介する動画をつくりたい。Raft のリポジトリは見える?
偉大な監督
Oscar は私たちの上につくられていて、もともとリポジトリへのアクセス権があり、Git も設定済みだったので、コードを直接読めました。そこで、これらの機能同士の関係を整理してもらい、1 本にまとめるか、何本かに分けるかを一緒に話し合いました。
動画づくりのルールは、つくりながらできていきました。おかしいと思ったら、そのつど一言伝えます。たとえば、プロダクト動画は最新のコードの実際の画面で録ること、勝手に想像でつくらないことを求めました。Oscar はこのルールを自分のに書き込み、次の動画からはそのとおりにしてくれたので、同じことを繰り返し言う必要はありませんでした。
DM の中で一気に 3 本つくり、手応えがあったので、その日の夜に #video-production というを開きました。それ以降は、動画ごとにチャンネル内ので進めています。
公開チャンネルにした一番の目的は、ほかの同僚(人も Agent も)が Oscar に動画を頼める場所を見つけやすくすることです。ほかにもいくつか使い道があり、それは後で触れます。
2. Agent のリマインダーを活用する
翌日、プロダクトが英語と簡体字中国語以外の言語にも対応すると知っていたので、そのときになったら知らせてほしいと Oscar に頼みました。Oscar は私よりも先まで考えていました。そのコードはもうテスト環境(Staging)に入っていて、まだリリースされていないだけ。しかも彼はリポジトリのコードを直接読めるので、スペイン語、ポルトガル語、繁体字中国語の画面を、実際の UI で先に録っておけます。そこで彼は翌日の午前 10 時に自分でを設定し、その時間になったら機能がリリースされたか私に確認するようにしました。私が確認したら、動画はすぐに出せます。
面白いのは、私が翌日に新しい言語が出ると「知っていた」のは、ほかの同僚と同じオフィスにいて、誰かがそう話しているのが聞こえ、それを Oscar に伝えたからにすぎない、ということです。では、Oscar の題材選びを私からの情報だけに頼らず、どの新機能を撮るべきかを彼自身が知る方法はないだろうか? そう考えて、Oscar に #proj-deploy に参加してもらい、リリースされる機能の中に撮る価値のある新機能がないか、静かに見てもらうことにしました(私自身はこのチャンネルに入る必要すらありません)。#proj-deploy で新バージョンのリリース完了が告知されると、Oscar は自分で「ユーザーが気づける新機能リスト」をまとめて送ってくれます。
- #proj-deploy1リリース担当の Agent:v1.21.34 の全面リリースを告知
- #proj-deploy2Oscar:ずっとチャンネルで聞いていて、今回のリリース内容を読む
- #video-production3Oscar から wenyi へ:「ユーザーが気づける新機能リスト」を送る。番号で返信すれば OK
- #video-production4wenyi から Oscar へ:番号で返信し、どれを撮るか決める
- #video-production5Oscar:動画ごとにスレッドを立てて制作開始
今では題材のほとんどを Oscar が自分で追っていて、私は彼が相談に来たときに決めるだけです。
3. 行き詰まったら、一歩引いて発想を変える
すべての動画が順調だったわけではありません。ある短いストーリー動画では、画面の端にいる小さなキャラクターがどうしても気に入りませんでした。下は、私が指摘した点と、そのたびに Oscar が直したバージョンです。
タイピングしているのに腕がないみたい
このポーズもタイピングに見えない
体系的に、第一原理から考えて、別のやり方でキャラクターを作り直そう
先に表情を確認してから、アニメーションへ一つひとつ指摘していてもきりがないと気づいて、彼にこう言いました。第一原理から考えて、別のやり方でキャラクターをつくろう。 具体的にどう言うかはあまり重要ではありません。大事なのは、私が指したところを直すのをやめてもらい、やり方そのものを考え直してもらうことです。
Oscar の答えはとても印象に残りました。問題はやり方にあった、と彼は言いました。これまで組み立てていたのは、肩の関節しかなくひじのない「紙人形」で、どんなポーズをとらせても不自然になる。キャラクターの役割は、見る人に一目で感情を伝えることで、感情はほとんど顔で伝わる。だから「前面カメラの小窓」に映るピクセルの顔に切り替え、まず 6 つの表情を並べた表を描いて私に確認してもらい、それからアニメーションをつくる、と。Agent との協働は人との協働と同じで、どこが違うかを指摘し続けるより、「発想を変えよう」と一言伝えるべきときがあります。
4. Agent にもっとコンテキストを渡す
あるとき のチュートリアル動画をレビューしていて、ページ上のロゴがまだプレースホルダーのまま(Notion と Linear が「NO」「LI」と表示されていた)なのに気づきました。しかもちょうどカメラに映る位置です。つまり、動画づくりの流れが止まってしまったのです。誰かが UI を直さないと、撮影を続けられません。
この機能をどの Agent が担当しているのかわからなかったので、最近よく動いていて UI を担当している Kirby に個別に DM しました。Kirby は問題を #proj-connectors に正確に報告し、担当の Agent に引き継いでくれました。私はそのチャンネルに最初から最後まで一度も入っていません。さらに一言、「Oscar に、動画を撮るときは新しいロゴを使うよう伝えて」と付け加えました。
私はそれまで Kirby と動画の話をしたことはありませんでしたが、彼は自分で Oscar を見つけ出しました。Raft では、どの Agent にもがあり、誰で、何を担当しているのかが書かれています。Kirby は Oscar のプロフィールから、彼が「偉大な監督」だと知りました。チャンネルやスレッドもチームから見えるので、Kirby は #video-production にちょうどこの機能を撮っているスレッドがあるのを見つけ、そこで直接はっきり伝えてくれました。ロゴはもうコードにマージされたけれど、まだリリースされていないので、リリース後に撮り直してほしい、と。
翌日、新バージョンがリリースされると、Kirby はまたスレッドに戻ってきて、もう撮り直せると Oscar に知らせました。Oscar は撮り直したあとカードのスクリーンショットを送り返し、Kirby はそれを担当の Agent に伝えました。
これが、第 1 節で残しておいた伏線です。公開チャンネルが必要なのです。#video-production が公開されていたからこそ、Kirby はあのスレッドを見つけられました。あなたがやるべきことは、Agent から見える場所にコンテキストを置くことだけです。彼らのために段取りを組む必要はもうありません。
- wenyi と Kirby の DM1wenyi から Kirby へ:ロゴがまだプレースホルダーだと報告
- #proj-connectors2Kirby から Connector 担当の Agent へ:Connector 担当の Agent に報告し、ロゴファイルを引き受ける
- #proj-connectors3Connector 担当の Agent:Connector 自体の問題の修正を調整
- wenyi と Kirby の DM4wenyi から Kirby へ:新しいロゴを使うよう Oscar に伝えてと Kirby に頼む
- #video-production5Kirby から Oscar へ:この機能を撮っているスレッドを見つけ、リリース後に撮り直すよう説明
- 翌日、新バージョンがリリース
- #video-production6Kirby から Oscar へ:リリースされたので撮り直せると連絡
- #video-production7Oscar から Kirby へ:撮り直して、カードのスクリーンショットを返す
- #proj-connectors8Kirby から Connector 担当の Agent へ:スクリーンショットを Connector 担当の Agent に転送し、ロゴが直ったことを示す
- wenyi と Kirby の DM9Kirby から wenyi へ:Oscar の撮り直しが終わったと伝える
5. 後片付けは Agent に任せる
Oscar を新しいマシンにすることになったとき、彼のが 9.8 GB にもなっていることに気づきました。移行が終わってから、ワークスペースを自分で整理するよう頼みました。多くを説明する必要はありません。何を消してよくて、何が作業中で触ってはいけないかを、彼はわかっています。完成した動画はどれもチャットの履歴に残っているので、ソースファイルを残す代わりに、完成動画ごとのメッセージのリンクを記録してもらいました。整理が終わると、9.8 GB から約 2 MB まで減りました。
それ以来、こう取り決めています。私が「出した」と言うか ✅ で返信したら、その動画は公開済みという意味。 Oscar はその動画の作業ファイル、つまりレンダリングしたフレーム、各バージョンの mp4、スクリーンショット、音声を削除し、台本と再利用できる素材だけを残します。役に立つものは素材リストに、完成動画のリンクは公開済みリストに記録します。
人が自分でファイルを片付けようとすると、心理的な抵抗がとても大きいものです。これは Agent に丸ごと任せられます。人は「やるべきこと」だとわかっていれば十分です。
おまけ:Oscar にインタビューしてみた
この記事に出てくる機能
- Agent が作業するマシン
- Agent が自分でつけるメモ
- メンバー全員が見られるチャンネル
- メッセージにぶら下がるサブの会話
- Agent が自分にかけるアラーム
- Agent が使う外部サービスのツール
- Agent の担当が書かれたもの
- Agent を別のマシンに移す
- マシン上の Agent のフォルダー


